2020年02月13日

人に歴史あり、選手でも監督でも成功した野村さん逝く

‘20年2月13日(木)

○河北新報
野村克也さんは3歳の時に
父親を戦争で亡くした。
病弱な母親に育てられ、
極貧生活を送る。
夜なべをして働く母を見て
「金持ちになって
 母を楽にしたいと思い、
 プロ野球選手を志した」と
自著『人生を勝利に導く金言』
(致知出版社)につづった
▼努力が開花し球界を代表する
強打の名捕手になった。
母の死の2年後に南海から
監督就任の要請を受ける。
「監督はやっちゃいかん。
 人様に迷惑を掛ける」
というのが母の遺言だったが、
成功して死んだ母を喜ばせ
たいと思い、引き受けた
▼名監督としても活躍した
野村さんが84歳で亡くなった。
苦労を重ねた人生が縁を
引き寄せたのか。
南海、ヤクルト、阪神と
低迷するチームを率いた
▼2005年、球団創設
1年目の東北楽天が0−26で
大敗した試合を見て
妻の故沙知代さんに予言した
という。
「俺に監督要請が来る」。
翌年から4年間指揮を執り、
断トツの最下位だった
チームをAクラス入りする
までに育てチームの礎を築いた
▼09年に日本ハムに敗れた
クライマックスシリーズが
公式戦最後のユニホーム姿
だった。退任が決まり、
両チームの選手に胴上げ
された。敵地なのに
「野村コール」が起きた。
自身を月見草に例えた野村さん。
グラウンドに大輪の花を
咲かせた在りし日の姿が
まぶたに浮かぶ。
(河北春秋 河北新報ONLINE NEWS2/12)

○日本経済新聞
去年の7月11日。
仕事を早々に切り上げ、
雨がそぼ降る東京・神宮球場に
タクシーを飛ばした。
プロ野球のヤクルト球団設立
50周年を記念したOB戦を
見逃すわけにはいかない。
この負け癖がついたチームにも、
黄金の1990年代があった。
名監督ノムさんの手腕だ
▼約2万8000人の観衆が
最も沸いたのは、四回裏。
「代打・野村克也」が告げられた。
バットをつえにして、ベンチから
おぼつかない足取りで打席に向かう。
その腕を、まな弟子の
古田敦也さんが支えた。
初球は見送る。2球目は空振り。
通算657本塁打の84歳の
レジェンドに怖じ気づいたのか。
相手は申告敬遠した
▼この寸劇に大いに笑った。
同時にしんみりした。
ユニホームを着た最後の雄姿に
なるのか。目に焼き付けよう。
多くのファンがそう感じていた
はずだ。ノムさんの訃報に接し、
歓声を浴びながらベンチに退く
後ろ姿がよみがえった。
卓越した理論を時にボヤキに
変換し、南海、ヤクルト、阪神、
楽天を率いた名伯楽だった
▼一方、歴代最多の1563の
負けを喫した。
「勝ちに不思議の勝ちあり。
 負けに不思議の負けなし」の
金言は失敗に学ぶ哲学だ。
「野村再生工場」で、
戦力外通告された選手を復活
させた。人事の妙は企業経営にも
通じるのだろう。
「日経ビジネス」2月10日号の
取材で人材育成について語って
いる。球界は至宝を失った。
(春秋 日本経済新聞2/12)

○毎日新聞
ノムさんこと野村克也さんは
少年時代、夕暮れの浜辺に咲く
かれんな花に心引かれた。
「なぜ昼に咲かないのか」。
それを思い出したのは数十年後、
通算600本塁打を前に、
達成時の談話を考えていた時
だった

「王や長嶋が太陽を浴びて
 咲く『ひまわり』とすれば、
 こっちは人目にふれない
 ところで咲く『月見草』や」。
記録達成の日の観客は7000人、
同日の巨人戦は5万人近い入りだった。
歴史的談話は熟考し、準備された
ものだった

「人や集団を動かすものは  
 言葉しかない。
 ほかに何があるんですか」が
口癖だったノムさんは、
練達の言葉の使い手だった。
捕手時代の「ささやき」戦術、
監督として掲げた「ID野球」、
芸の域に達した「ぼやき」も
そうであろう
▲だから名言は多い。
「野球は気力1分、体力1分、
 残り8分は頭なんや」
「配球も人生も大事なのは『緩急』」
「グチは『不満』を表すもの、
 ボヤキは『理想と現実の差』を
 表現する」
「アマは『自分が喜ぶ』。
 プロは『人が喜ぶ』」
▲打者としての最多打席数や
歴代2位の本塁打、安打、打点、
さらに平成最多勝利監督などの
栄誉は今さらたたえるまでもない。
ただ精神論が幅をきかせてきた
日本の野球に「考える野球」の
文化を吹き込んだ功績は忘れては
なるまい
▲名言
「勝ちに不思議の勝ちあり、
 負けに不思議の負けなし」は
剣術書からの引用だという。
「ささやき」の昭和から
「ぼやき」の平成へ、大記録と
令和の野球文化を次世代に
残し、ノムさんが旅立った。
(余録 毎日新聞2/12)
posted by (雑)学者 at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | お悔やみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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