我々が住んでいる
世界の物質と
基本性質は同じだが、
電気的な性質が
反対の「反物質」
がある。
宇宙誕生の時、
ほぼ同じ量の物質と
反物質ができた。
これが完全に同じ量
だったら、すべてが
消え、我々は
存在しなかった。
幸い、その量に
わずかな違いが
あったため
一部が残り、
今の地球や宇宙を
作っている。
その違いはなぜ
生まれたのか。
この
「対称性の破れ」を
説明しようと
したのが、
私がした仕事だ。
物質を細分すると、
陽子と中性子、
電子からなる
原子に行きつくが、
陽子と中性子は
さらにクォーク
という素粒子で
できている。
私と益川敏英博士は
1973年、
対称性の破れを
説明するには
6個以上のクォークが
必要だと発表した。
当時見つかっていた
クォークは3個。
残りの3個は、
その後20年以上
かけて見つかった。
私たちの研究が
生まれた背景には、
二つの要因がある。
数学の理論が進展し、
素粒子の理解が
一気に進んだ時代
だったことが一つ。
もう一つは、
名古屋大学の
坂田昌一先生の
グループで
学んだことだ。
坂田グループは、
素粒子の
組み合わせのモデル
について
独自の考えを持って
いた。
西欧の研究者は
懐疑的だったが、
坂田モデルは
その後のクォーク
モデルに発展し、
路線は間違って
いなかったことが
証明された。
名古屋大での
議論や研究が、
6個のクォークに
到達する素地に
なった。
理論は発表して
終わりではなく、
出発点になる。
世界中で
多くの理論が
試され、
よりうまく自然を
説明するものが
残っていく。
一人で全く新しい
ことを
成し遂げるのは
難しい。
いろいろな人が
いろいろなことを
考え、
試している中に、
答えに一番近いもの
がある。
その時すぐに
わからなくても、
結果的に
正しい答え
であることが
確かめられ、
創造的な成果だと
見られるのでは
ないか。
創造性を育てるには、
そのような
多様性が必要だと
思う。
一人ひとりの経験や
受けてきた教育、
過去のキャリア
などが多様性を生む。
それぞれが、
自分で選んだ
やり方に
自信を持って進む
ことが大切だ。
(京大高エネルギー
加速器研究機構
特別栄誉教授小林 誠
「科学フォーラム札幌」
基調講演
讀賣朝刊10/23 26面)
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タグ:原子 クォーク 素粒子

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