鎌田實(医師)氏が
貧困と戦う男を
紹介している。
年越し派遣村村長で、
NPO自立生活
サポートセンター・
もやい事務局長も
務める男と会った。
彼の名は湯浅誠。
東京大学を卒業後、
東大大学院で
研究に取り組んだ。
‘90年代から
野宿者支援に携わり、
日本の貧困問題を
現場から
訴え続けている。
超エリートなはず
なのに、
こういうチグハグな
生き方、大好き。
背が高くハンサム。
かっこいい。
彼を動かしている
ものは何かと聞いた。
「自分だって
こんな社会では
生きたくないという
思いからです。
私は社会の一員
としての
当事者意識から
活動を続けています
から、
生活に困っている
人のために
やっているという
感覚はありません」
今の社会の
ふがいなさや
政府の無能を
あげつらうのでは
なく、
社会の一員として
自らの責任を
感じているのだ。
この男、
本当に貧困と
戦っている。
'97からの10年間に、
非正規労働者は
574万人増え、
正規労働者は
419万人減ったという。
雇用の安定が
壊されている。
湯浅は
「多くの人たちは
非正規労働を
望んでいないのに、
非正規労働しか
仕事がない状況に
陥れられている」
と言う。
国税庁の発表では、
年収2百万円以下の
給与所得者が
'06年、1千万人を
超えた。
貯蓄なし世帯は
'05年に23.8%となり、
10年前の約4倍に
なっている。
これでは将来に
備えられない。
未来を語ることも
できない。
生産年齢人口の
貧困率が、
米国に次いで2位に
なった。
47歳の男性が
168円のケーキを
盗んで捕まった
という話も聞いた。
これが、豊かな国で
あるはずの日本の
現状である。
若年層のほぼ半数が
非正規労働者と
なってしまった。
非正規労働が
すべて悪いわけでは
ないが、
生涯賃金が上がらず、
簡単に
首を切られるのでは、
結婚も子育ても、
諦めざるを得ない。
子どもが生まれないと
この国の内需は
伸びない。
少子化を進めてしまう
国づくりはおかしい。
にもかかわらず
社会は、
「今の若者は
夢をみない」
と責め立てる。
ネットカフェ難民の
40%が高校中退者か
中卒者という調査が
ある。
教育でつまずいた
ことが、
貧困につながる。
しかも、
貧困は親から子へと、
世代間連鎖を生む。
貧困であるために
教育が受けられず、
教育が
受けられないために
いい仕事につけない。
貧困は、
人生の選択の幅を
極端に狭くする。
以前、ぼくは
秋田杉で有名な
地域の高校を訪ねた
ことがある。
地元で仕事に就きたい
と思っても
仕事はなく、
優秀な生徒たちに
与えられていたのは、
自衛隊に行く選択
であった。
イラク戦争を始めた
ブッシュ前政権は、
富裕層を優遇した。
経済格差が広がった。
米国軍のリクルーターは
大学進学などの
アメをちらつかせながら、
貧困層の若者たちを
イラクやアフガンの
戦場へ送り出した。
いかにも米国流の、
自己決定で
戦場に行っているように
見せかけているが、
格差というシステムを
利用して戦争している。
貧困は、
気づかないうちに
足元でぽっかり
口を開けている。
一度陥ったら
なかなか這い出せない。
平和を守るためにも、
貧困を減らし、
ぶ厚い中流をつくる
必要がある。
(鎌田實 へこたれない
PHP'09/9
PHP研究所)
非正規労働者を減らし、
ぶ厚い中間層を
つくろうとすれば
産業界は反対するだろう。
国内で調整が
必要なときこそ
新政権の出番である。

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