2008年10月26日

人を惹きつける志のいろいろ

'08年10月26日(日)

ホテルのサービスは
利用客からサービスの全容が
分かるようだと
それほど質の高いものでは
ないと
業界では考えられている
ようです。

一流のホテルで
ワイシャツの洗濯を頼めば、
ボタンを取って洗濯し、
仕上げのときに、
1個1個つけ直す
のだそうです。

それによって、
取れそうだったボタンが
しっかりと
取りつけられます。

翌日、その人に
どんな重要な
面談が待っているか
わかりません。

ある外国の文筆家が、
愛用の瓶入りのインクを
忘れて帰りました。

何年か後に、
そのホテルに泊まったとき、
フロントで名前を告げると、
そのインクが出てきました。

その文筆家は、
来日したときは、
日本の何処に用事があっても、
行程を調整して、
そのホテルに泊まるように
なったそうです。

行動科学は、
人間の行動に関する一般法則を
体系的、総合的に究明しようと
する学問領域の学問だが、
サービスだけを売り物にする
ホテル業界にあっては、
これらの知識も動員して
利用客に感謝されるサービスを
模索し、従業員の質を高める
日々の努力がなくてはなりません。

この努力が
どこまで続けられるかは
これに携わる人たちの「志」に
あると思うのです。

精進する芸術家の「志」のほどを
紹介するエピソードとして、
アンナ・パブロバの
「瀕死の白鳥」を見た
六代目菊五郎の話があります。

「アンナ・パブロバの
 『瀕死の白鳥』があまりにも
 すばらしいので、
 菊五郎は四度見にゆく。
 四度とも、
 白い衣装の羽根をだらりと
 のばして死ぬ場面で、
 彼は
 『あのまま死んでしまうのでは
  ないか』
 とハラハラしながら見ている。
 そこは、
 至芸を謳われた菊五郎だ。
 金井山太郎という懇意な大道具に
 たのんで
 彼の袢纏(はんてん)を借り、
 すっかり道具方に化けて、
 素知らぬ顔で楽屋へ入ってゆき、
 上手(かみて)から
 彼女の動作を見ていた。

 ぴんと張った両手が
 次第に垂れてゆく。
 このとき、
 パブロバはひとつも息を
 していなかった。

 『お前さん、もしあのまま幕が
  おりなかったらどうする?』と
 聞く。
 パブロバがこう答える。
 『あのままアンコールが続いて
  幕がおりなかったら、
  私のすばらしい終焉です。
  このまま死んでしまったら、
  と思うことが何回もあるんです。』

 菊五郎は
 パブロバの右足の親指が
 短いのを発見し、
 自分の右足の指も短いのだと
 見せ合ったあと、
 次のように結んでいる。
 『まったく舞台に立つのは、
  人から何とかいわれるまでに
  なるのにゃ、
  一個所や二個所はおかしくなる
  くらいの修業はいるもんです』
 草柳大蔵 水は深く掘れ
 知的いきかた文庫(三笠書房)から抜粋


参考
 六代目尾上菊五郎(1885/8/26-1949/7/10)
  大正・昭和時代に活躍した歌舞伎役者
  俳名は三朝 屋号、音羽屋
  初代中村吉右衛門とともに、
  いわゆる「菊吉時代」を築いた
  歌舞伎界で単に六代目と言えば
  通常この六代目菊五郎を指す(Wikipedia

 アンナ・パブロバ(Anna Pavlova 1881/2/12-1931)
  サンクト・ペテルブルグの郊外に生まれる
  10歳で帝室バレエ学校
  (現在のワガノワバレエ学校の前身)に入学
  その後帝室マリインスキー劇場に入る
  サン・サーンスの『白鳥』に振付けられた
  『瀕死の白鳥』は彼女の代表作
  1910年からはロンドンに移住し、
  自分のバレエ団を設立し、
  世界各地を旅しながら、
  バレエ公演を行った 


YouTube-Lopatkina - The Dying Swan
posted by (雑)学者 at 00:00| 東京 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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