「今は逃げているけど、
家に連れて帰って
くれるよね」。
緒方貞子さんは9歳ぐらいの
男の子に言われた一言が忘れ
られなかった。
男の子はコソボ紛争で発生した
難民の1人。
「もちろん」。緒方さんはそう
答え、頑張らなければと思った。
『緒方貞子 戦争が終わらない
この世界で』(NHK出版)で
述べている
▼緒方さんが92歳で逝った。
60歳を過ぎて国連難民高等
弁務官に就任。隣国に入国を
拒まれ、イラク国内に
とどまるクルド人避難民の
支援を決断した。
従来の難民救援は
国外に逃れた人が対象で
前例がなかった。
理由は一つ。命を守るため
だった。
国境は関係なかった
▼常に現場を重視し難民の
声を聞いた。重さ15`の
防弾チョッキも着た。
愛称は
「身長5フィート
(約150a)の巨人」。
難民から感謝された証拠だろう。
アフリカ各地の難民キャンプに
「オガタサダコ」という名前の
子がいた
▼よく口にした言葉が
「持ちつ持たれつ」。
世界の国々は共存しなければ
いけないと考えた。
東日本大震災や日韓、
日中関係が緊張した際は
相互協力の大切さを訴えた
▼世界の難民は7千万人を超え、
難民に不寛容な空気が広がる。
日本も難民の受け入れが
少ない。
緒方さんは最後まで
志半ばの心境だったろう。
遺志は残された者が引き継が
ねばなるまい。
(河北春秋 河北新報ONLINE NEWS10/31)
ラベル:緒方貞子 コソボ イラク