2019年05月17日

目で口ほどの演技をした国際的女優京マチ子さん逝く   

'19年5月17日(金)

〇河北新報コラム
映画評論家の
故淀川長治さんが映画の
名作10本を選んだ時、
邦画が1本だけ含まれて
いた。それが
黒沢明監督の『羅生門』。
「ワンカット、ワン
 カットが全部きれいで
 世界中が驚いた」。
印象に残った場面として
泣き伏した京マチ子さんの
黒髪の美しさを挙げた
▼京さんが演じたのが
盗賊に襲われる侍の妻
だった。
気性の激しい女、か弱い女、
身勝手な女、狂気じみた女…。
京さんは「一人四役」
ともいえる難しい役をこな
した。後に
「生まれ変わって
 もう一度やりたい役
 といえば
 これです」と語った
(筒井清忠編著
 『銀幕の昭和「スタア」が
  いた時代』)
▼『羅生門』などの出演作が
国際映画祭で最高賞を受賞し、
グランプリ女優と呼ばれた
京さんの訃報が届いた。
大胆な演技で肉体派女優
として注目され、戦後を
象徴する存在だった
▼巨匠との仕事が多かった。
魅力は何だったのか。
黒沢監督は能の古面のような
顔を挙げた。確かに
エキゾチックで幽玄な
雰囲気は海外の人の心を
とらえたことだろう。ただ、
それにとどまらなかった。
文芸作品や人情劇など
多彩な作品に出演し、
演技派としても活躍した
▼「不器用な人間です」が
口癖だった。誠実な人柄も
愛された。95年の生涯を
閉じたが、銀幕の中での
京さんはあの時のまま。
不滅の輝きを放っている。
(河北春秋 河北新報ONLINE NEWS5/16

〇読売新聞コラム
映画界の巨匠、黒沢明監督は
演技にきびしい人だった。
意見が合わず主演俳優が
途中降板した大作もある。
ところが京マチ子さんの
前では温和な表情を見せて
いた
◆「京ちゃん、どう?」。
『羅生門』の撮影がはじ
まったころ、髪結いの
部屋に入ってきた。
そのとき京さんは
眉を剃り落としたばかり。
時代劇に自分の眉は
濃すぎて向かないと思い、
一存で顔を変えたという
◆「先生はこれは面白いと
 言ってくれて、自由に
 演技させてもらいました」。
かつて本紙に語っている。
黒沢監督でさえも、
大女優の道を歩む
「京ちゃん」の凄みに
早く気づいた映画人の一人
なのだろう
◆ベネチア国際映画祭で
金獅子賞を取った
『羅生門』をはじめ、
数々の名作に出演した
京さんが96歳で
亡くなった。
デビューしてまもなく、
「彼女に一点光のごとく
 精彩を与えているのは
 その目だ」と言った
評論家がいる。
日本映画の黄金期から
数十年が過ぎた今なお、
モノクロのスクリーンから
あたかも光源であるかの
ように輝く目を
脳裏に刻む方は多いこと
だろう
◆そのまぶたは永遠に
閉じられた。
遺骨はハワイのお墓に
葬られるという。
(編集手帳 讀賣新聞5/16)
posted by (雑)学者 at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | お悔やみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする