2019年03月22日

免疫機能で生活習慣病を退治する新たな医学的戦略

'19年3月22日(金)

過剰なカロリー摂取や
運動不足などによって
発症する高血圧や糖尿病
などの生活習慣病は、
薬による完全な治療が
難しい。この難題を、
体に備わる防御システム
である免疫を使って解決
しようとする研究が注目
され始めた。
感染症をワクチンで予防
するように、免疫の働きで
生活習慣病を抑えこむ
戦略だ。研究者は効果的な
治療法として実現を目指
している。

慶応義塾大学の畔上達彦
助教が、多数の穴が開いた
実験器具へ液体の成分を
注いでいく。
高血圧を治療する
ワクチンの候補物質だ。

ワクチンはもともと
天然痘や風疹などの
感染症を予防するために
開発された。
免疫の働きを活発にし
病原体を倒す。
がん治療を目指す研究も
ある。
さらに生活習慣病の予防や
治療にも応用しようという
試みといえる。

高血圧は代表的な
生活習慣病で、
脳卒中や心疾患につながり
「サイレントキラー」
(静かな殺し屋)と呼ば
れる。降圧剤で治療する
人が多い。
継続して飲み続ける必要が
あり、使う人が増えれば、
医療財政を圧迫する要因
にもなる。
畔上助教は
「体に備わる免疫の力を
 利用するワクチンなら、
 数回の投与で長く効く」
と解説する。

このワクチンを投与すると
免疫細胞の「B細胞」が
特殊なたんぱく質を作り
出す。血管などの細胞の
表面にある血圧を高める
センサー役のたんぱく質に
特異的にくっつく抗体と
なり、センサーの働きを
邪魔する。2012年には、
高血圧のラットに注射し
血圧を2割下げ、効果が
約20週間続く成果を
あげた。
「降圧薬に匹敵する効き目
 だった」(畔上助教)

高血圧は慢性的な病気で
治療が長引く。痛みを
伴う注射を避けようと、
使いやすい点鼻式の
ワクチンを開発した。
これを高血圧ラットで
使ってみると、血圧を1割
下げる効果を18年に確認
できた。

このワクチンは安価で
発展途上国でも使いやすい。
他のワクチンと一緒に使う
ことも可能で、動物実験
では、高齢者の死因に多い
肺炎を予防するワクチンも
組み合わせた。
畔上助教は
「複数の病気を同時に
 治療、予防できそうだ」
と期待を寄せる。

大阪大学の中神啓徳寄付
講座教授も、B細胞に
抗体を作らせて血圧を
下げるワクチンの開発を
狙っている。
高血圧マウスの血圧を
1〜2割下げた成果を
15年に発表した。
高血圧に伴って発症する
動脈硬化や心臓の肥大も
改善できたという。

阪大発の製薬ベンチャー
企業のアンジェスが、
18年にオーストラリアで
臨床試験を始めた。
24人の高血圧患者の
協力を得て効果を調べて
いる。同社は、大手の
製薬企業へこの技術を
導出し、実用化を目指す
考えだ。

様々な生活習慣病の元兇
ととらえられている肥満の
進行を、免疫の働きで
食い止めようとする研究も
始まった。
北里大学の岩渕和也教授は
病原体に感染した細胞や
がんになった細胞を攻撃
する「NKT細胞」に目を
付けた。

岩渕教授は12年にこの
細胞が肥満を促している
仕組みを解明した。
その成果をヒントに
カロリーの高いエサを
与えて、NKT細胞を
作れなくした改造マウスと
普通のマウスの肥満度が
どう変化するのかを調べた。
普通のマウスは14週間で
体重が倍の40cに増えた
一方で、改造マウスは
3割少ない30cにとど
まった。

NKT細胞はエサに含ま
れる脂質由来の物質を
検知すると外敵と認識して
攻撃を開始し、慢性的な
炎症を起こす。
炎症を起こした場所の
周辺の細胞はエネルギー
である糖分を消費する
効率が悪くなる。
余った糖分は将来の飢餓に
備えて蓄えようとする
脂肪細胞に取り込まれる。
脂肪細胞はますます
サイズを大きくし、
肥満に陥る悪循環が考え
られている。

動脈硬化を防ぐ薬の一種に
NKT細胞の働きを邪魔
する作用があると分かって
いる。
岩渕教授は
「この薬を使うと
 NKT細胞による炎症を
 抑え、肥満を防げる
 かもしれない」と予想。
これから効果を確かめる
考えだ。

先進国で市民の健康を守る
政策の軸足は、
感染症対策から生活習慣病
や慢性疾患の克服に移って
いる。
一時的に症状を抑える薬は
あっても、根本的な治療
には食事の制限や運動の
継続が欠かせず、挫折して
しまう人も多い。

生物の免疫機構は様々な
細胞が多様な物質を巧みに
使いこなして成り立って
いる。
生活習慣病を発症する
分子レベルの仕組みが
明らかになり、うまく
組み合わせようという
考え方が盛り上がりつつ
ある。効果的な対策が
実用化できれば、
生活習慣を簡単に改め
られない人に向いている
かもしれない。
(草塩拓郎)
(日本経済新聞3/17
 30(サイエンス)面)

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2019年03月21日

情熱を燃やし続けられれば、恵まれた人生である

'19年3月21日(木)

川に落ちれば、
泳ぎのうまい下手は関係
ない。
岸に上がるか溺れるか
ふたつにひとつだ
  サマセット・モーム
  「月と六ペンス」

サマセット・モームは、
イギリスを代表する小説家。
10歳で孤児となりながらも、
軍医、諜報部員などを経て、
小説家として
「月と六ペンス」で注目され、
その後数々の優れた作品を
世に残しました。

この小説は画家ゴーギャンの
人生をモデルに、金も地位も
名誉も求めず、絵に賭けた
ひとりの人間の人生を描いて
います。
これはそのなかで、語り手が
ストリックランド
(ゴーギャンをモデルにした
 人物)に、
「才能がまったくなくても
 すべてを捨てる価値が
 あるのか」と問うた
ときに答えた言葉。
ストリックランドは、
この言葉の前にこうも述べて
います。
「おれは、描かなくては
 いけない、といっている
 んだ」

なにかをしようとする
ときに、自分にそれが
できるかどうか、
才能があるかないかを
気にする人はたくさん
います。もちろん、
やりはじめる前は
わからないことも多く、
不安になる気持ちは
誰にでもあるでしょう。

しかし、
やる人はどんなことが
あってもやります。
うまい下手などは、
どうでもいい問題だという
ことです。
たとえそのためにどれだけ
苦労することになっても、
よろこんでその苦労をする
人間こそが、もっとも
強いエネルギーを持って
いるのです。

もちろん、
強い決意があったからと
いって、成功や幸せが
保証されているわけでは
ありません。だからこそ、
自分の幸せの基準は、
自分で決めるしかありま
せん。

もっといえば、やり抜く
人にはそんな基準さえも
なく、ただ情熱があるのみ
なのでしょう。
そこまでの情熱があれば、
人は強く生きていくことが
できるのです。
(齋藤孝 心を動かす偉人の言葉
 セブン&アイ出版)


「わだば、ゴッホになる」
といった版画家棟方志功の
手は、生産ラインのロボット
アームのように無駄なく
動いて、嬉々とした
制作中の姿が
生きていることそのもの
であった。
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2019年03月20日

戦う相手に最善を尽くさせよ、新渡戸稲造の礼節

'19年3月20日(水)

敵と言えば、「匹敵」などの
言葉もあるように、同等の
者の間に起こる関係である。
したがって、争うからには、
同等の事情のもとに争わね
ばならない。
人の虚に乗じ、人の弱点を
狙うのは卑怯のいたりで
ある。

私は敵と争うならば、
相手にできるだけ最善
(ベスト)をつくさせて
から、争うようにしたい。
たとえば人と議論をする
ならば、敵の言葉尻を
とらえるとか、揚げ足を
とるとかというような
こをせずに、相手の思う
ところは充分にこれを述べ
させ、そののち正々堂々と
自分の主張を発表し、
攻めるべきことは攻める
べきであると思う。
このように相手に譲って
争うのが、敵に対する礼節
であると思う。

英国人モーリスは人格の
英邁な人であった。
氏は人と議論するにも、
なるべく敵に花をもたせる
ように努めた。
だから何事かを論ずるときは、
反対論に充分に色をつけて
述べるから、自説よりも
かえって立派に見える。
聞く者は反対論のほうを
よいように思うが、
「あれだけ反対論を立派に
 紹介する度量をもった人の
 意見であるから、あの人の
 説に同意する」
と言う人が多かったという。
これなどは、議論に負けても
人格の力で勝ったのである。

戦いでもまたそうである。
今日はどうであるか知らない
けれども、昔の武士道による
戦いは正々堂々たるもので
あった。ことに私が最も
感服するのは、
四方田(よもた)但馬守と
加藤清正との戦いである。

ふたりが尼ヶ崎で相戦った
とき、清正の刀が中ほど
からはっしと折れ、
四方田が斬り込めば
清正は尼ヶ崎の露と消える
ところであった。
しかし四方田は、折れた
刀の人を討つのは武士の
情けにあらずと思い、
清正の申し出に応じて
組み討ちをした。

もみつもまれつしたが、
清正の力が優れていたので、
ついに四方田を組み敷き、
短刀一閃、敵の喉に
突きつけようとしたが、
清正も武士の情けを知る
人間である。
自分の刀が折れたとき
情けの猶予をくれた人を
殺すには忍びない。
そこで四方田を助け起こし、
いずれ重ねて晴れの勝負を
しようと約束し、互いに
彼のためなら命もいらぬ
と思いながら別れたという。

敵同士として争うならば
こうありたい。
正々堂々としたい。
卑怯な振舞いをして
勝ったとしても、それでは
誇りとはならない。

近頃の新聞雑誌には
人物の評論が多く掲げられ
ている。そしてその評論は
匿名または無名の人が多い。
これらの評論は人物をほめ、
または謗(そし)るにしても、
はなはだしく礼節を欠くもの
である。
人がその説を紙上に掲げて
公表する以上は、善悪ともに
自分がその言責を負うべき
である。
匿名のもとに隠れて
責任を免れようとするのは
卑怯である。
しかも不思議なことには、
匿名者のうちには立派な
人と称されている者さえ
いる。
私は、敵にせよ味方にせよ、
これはあまりに無礼な
振舞いと思う。

昔の武士は名を名乗らずに
闇討ちすることや、後ろ
から斬りつけることを、
最も卑怯として恥じ、かつ
排斥したものである。
匿名で人を評論するのは、
闇討ちや後ろから斬るのと
同じである。
たとえその議論はあくまで
公平なものだとしても、
何がためにするところ
あっての所説と思われ、
少しも重きを置くことが
できない。

私は、このような卑怯な
ことをしたくない。
敵に最善の力を用いて
立派に戦わせるだけの
雅量を備えて戦いたい。
敵に対する礼節とは
このようなものである。
(新渡戸稲造 世渡りの道改題
 自分をもっと深く掘れ!
 三笠書房知的生きかた文庫)

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2019年03月19日

向かないことを無理にすれば病気になると貝原益軒

'19年3月19日(火)

(よろず)の事、
皆わがちからを
はかるべし
   貝原益軒「養生訓」

「どんなことでも、
 自分の力量を知った
 うえで行いなさい」
という意味です。
自分に自信を持つのは良い
ことですが、やはり
自信過剰になることは禁物。
若いときなら
勢いにまかせてやることも
できますが、ある程度
年を経ると、自分が本当に
力を出せることや、
自分にはうまくできない
ことを知っておく必要が
あるのです。

よく誤解されがちですが、
自分に「できないこと」が
あるのはけっして悪いこと
ではありません。
「できないこと」を客観視
できるからこそ、自分が
「できること」に力を集中
させることができるから
です。

また、自分の力を知って
いると、人の力を正しく
借りることができます。
むしろ、できないのに
「できる」と考えていると
どこかで間違いを犯し、
結果的にまわりの人に迷惑を
かけることにもなりかね
ません。
あなたの職場に、そんな
ミスを繰り返している
上司や同僚はいませんか?

自分の力にある意味の
「見切り」をつけることは、
否定的なことではありま
せん。

より幸福な人生を歩む
うえで大切な姿勢であり、
心豊かに毎日を生きる
ための知恵なのです。
(齋藤孝 心を動かす
 偉人の言葉
 セブン&アイ出版)


参考
引用箇所原文
万の事、皆わがちからを
はかるべし。
ちからの及ばざるを、
しゐて、其わざをなせば、
気へりて病を生ず。
分外をつとむべからず。
(貝原益軒 養生訓
 伊藤友信現代語訳 講談社学術文庫)

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2019年03月18日

「バナナうんち」を心がけ、現代病と決別しよう

'19年3月18日(月)

理化学研究所で、
腸内細菌を研究している
辨野です。

腸内環境が悪くなると、
腸の活動が低下し、
健康に関係することは、
ご存知ですね。

腸には善玉菌、悪玉菌、
日和見菌がいますが、
悪玉菌から生まれた
毒素や発がん物質は、
血管を通って全身に
運ばれます。

その結果、肥満、無気力、
疲労、肌荒れ、花粉症を悪化
させたり、血流の低下や
動脈硬化など血管を老化させ
たりします。
がんとの関係では、
最新の統計で大腸がんが
部位別患者数の1位と予測
されていることは無視でき
ません。

また、最近の研究から、
現代病と腸内環境との
関係も明らかになって
きました。

例えば、アレルギー症状、
関節リウマチ
(自己免疫疾患)、自閉症に
悩む人が増えてきました。
こうした病気を抱える
人たちの腸内環境は、健康な
人と違うという研究結果が
報告されています。

また、うつ病、パーキン
ソン病、アルツハイマー
型認知症など脳の病気が
腸内環境と関係するとの
研究
(腸の作り出す神経伝達
 物質の不足で発症)も
進んでいます。

このように腸の健康が注目
されますが、今の時代は、
不規則な生活、大きな
ストレス、肉や脂の摂り
すぎ、運動不足などが
原因で、悪玉菌が増え、
腸内細菌のバランスが
悪くなる傾向にあります。

また、歳をとるだけでも、
ビフィズス菌などの善玉菌は
減り、悪玉菌が増えます。
それに病院でもらう薬にも
ご用心。
薬に含まれる抗生物質は、
病原菌だけでなく善玉菌を
減らす恐れがあります。

そこで食生活や運動で腸を
元気にする腸活が大切。
最近は
「ビフィズス菌が
 インフルエンザウイルスや
 病原性大腸菌O−157
 (食中毒の原因)から
 腸を守る」ことや、
「太りやすい人に特有の
 菌がある」こと、
「長寿に関わる菌
 (ビフィズス菌と
  酪酸産生菌)がある」
ことも分かっています。

腸内環境を“うんち”で
チェックしながら、腸活で
病気知らずの腸内環境を
作っていきましょう。

◎うんちでわかる
 あなたの腸内環境


〇バナナうんち
 80%程度の水分で
 黄色から黄褐色、腸内の
 善玉菌優位の理想的な
 うんち

×ガチガチコロコロうんち
 65%以下の水分で
 茶色から黒褐色、三日に
 一度より長い回数で、
 非常に硬く臭い
 悪玉菌優位のうんち

×ピシャピシャうんち
 90%以上の水分で色は
 さまざま、主に
 ストレスが原因で水状の
 悪玉菌優位のうんち

×ヒョロヒョロうんち
 85%程度の水分で黒褐色
 から黒、かなりゆるめで
 臭いのきつい悪玉菌優位
 のうんち

×ガチピシャうんち
 主にストレスが原因の、
 便秘と下痢が交互に起こる
 悪玉菌優位のうんち

×出ない
 3日以上出ない便秘は
 腸の老化のあらわれ。
 腸内に有害物質が
 溜まっているおそれあり
(辨野義己 理化学研究所
 科技ハブ産連本部辨野
 特別研究室特別招聘
 研究員、農学博士
 森永のサークル誌
 マミークラン’19/3
 森永乳業(株)市乳統括部)

posted by (雑)学者 at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする