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「フランケンシュタイン」
というと、顔にギザギザの
傷痕が走り、首にボルトが
突き刺さった怪物を
思い浮かべる人もいるだろう。
実は怪物には名前がない
▼1818年に20歳の
英国人女性、メアリー・
シェリーが出版した小説の
主人公の名前である。
若き科学者である
フランケンシュタインは
生物学の研究に没頭し、
死体をつなぎ合わせ、生命を
与えることに成功する。
しかし、自分が造り上げた
怪物の醜さに恐れをなして、
逃げ出してしまう
▼分子生物学の急速な発展に
よって、フランケンシュタイン
のような人物が、いつ現れても
おかしくなくなってきた。
中国の南方科技大学
(広東省深圳)の賀建奎
副教授もその一人なのだろうか
▼遺伝子操作の新技術
「ゲノム編集」を受精卵に行い、
双子を誕生させたと発表して
物議を醸している。
賀氏よれば、エイズウイルス
(HIV)への免疫を持つよう
遺伝子を改変した。
困難な疾患を治療する唯一の
方法だと主張している。
香港で昨日(28日)開かれた
国際会議で、改めて健康な子が
生まれた、と述べた
▼もっとも受精卵の遺伝子を
書き換えると、影響は子孫にまで
引き継がれ、思わぬ副作用が
出てくる恐れもある。
親が好みの外見や能力を選んで
産み分ける、
「デザイナーベビー」の誕生
にもつながりかねない。
専門家にとって、倫理的に
「越えてはならない一線」
だった。
中国国内の科学者も、
「人体実験だ」と激しい
批判を浴びせている。
そもそも成果の信憑性を疑う
声さえある
▼『フランケンシュタイン』
では、主人公のあまりに
無責任な振る舞いに
怒り狂った怪物は、その家族や
親友まで手にかける。
賀氏には、200年前の悲劇の
物語を熟読するようお勧め
したい。
(編集手帳 讀賣新聞11/29)
ラベル:遺伝子 受精卵 エイズ