2018年08月18日

米中貿易戦争の長期化を覚悟する中国の反応

'18年8月18日(土)
[米中貿易戦争] ブログ村キーワード

【中国観察】
米国の追加関税に対して
中国もすぐさま報復措置を
打ち出すなど、
米中の貿易摩擦が深刻化して
いる。
中国の王毅国務委員兼外相が
米国に対する「反撃」が
必要な状況だと述べるなど、
中国側もトランプ米政権に
一歩も引かない姿勢を強調して
いる。
中国金融界の有識者からは
「持久戦に備えなければ
 ならない」や
「世界のバリューチェーンに
 破壊的な影響をもたらす」
といった分析が出ている。

民間シンクタンクの
野村総合研究所(NRI)は、
日中金融界の有識者らが
両国の金融市場に関する
政策課題について意見交換する
「日中金融円卓会合」を
6月上旬に都内で開いた。
NRIが中国のシンクタンク
「中国金融40人論壇」と
2012年から共同で開いている
研究会で、第8回となる
今回は
「世界経済回復の挑戦」が
テーマ。
米中貿易摩擦の先行きが
不透明な時期だったが、
グローバルな貿易摩擦の影響・
対応などについて議論された。
中国金融界の有識者が
「米中貿易戦争」をどう見て
いるのかという点に絞り、
8月上旬に公表された
議事概要から一部を紹介したい。

著名エコノミストの余永定・
中国社会科学院学術委員は、
米国が中国に厳しい姿勢で
臨む理由について
(1) 米国は対中貿易赤字が
  非常に大きいとし、
  トランプ大統領は
  毎年5千億jに上ると
  主張している
(2)米国は中国が世界貿易機関
  (WTO)のルールを順守して
  いないと考えている
(3)米国は中国が不当な手段で
  米国の技術を入手したと
  考えている−
との3点を挙げる。その上で
「これらに関して、
 中国の学者は異なる見方を
 持っている」と
トランプ政権の見方に異議を
唱える。

余氏は、その異議の理由の
ひとつとして
「貿易赤字は多角的な問題で、
 二国間だけで評価するのは
 適切ではない。
 中国は米国に対して
 貿易黒字だが、日本を含む
 アジア諸国に対しては
 貿易赤字になっている」と
指摘。その上で
「例えば、米国が中国に
 対米貿易黒字を減らすことを
 強要するなら、
 中国はその他の国に対する
 貿易赤字を減らすことに
 なり、国際分業体制と
 世界のバリューチェーン
 (付加価値連鎖)に
 破壊的な影響をもたらす」
と世界に与える悪影響を
強調した。

また、余氏は米側の対応に
ついて
「中国の買いたい物を
 米国は売りたくない。
 もし米国が輸出をさらに
 開放してハイテク製品の
 中国向け輸出禁止を緩和
 すれば、米国の中国に対する
 巨額の貿易赤字は大きく
 変わるはずであり、
 この点でも米国の貿易赤字に
 関する主張は不公正だ」
と訴えた。

今後の米国との交渉については
難しさも指摘した。

「米中貿易摩擦は、1〜2回の
 交渉といった短期間に解決
 できるものでないと認識
 すべきだ。日米の間にも
 依然として貿易摩擦が存在
 するように、米中間にも
 10年単位で貿易摩擦が存続
 する可能性がある。
 中国は『持久戦』に備えな
 ければならず、同時に、
 中国の改革開放のプロセスが
 米中貿易摩擦の影響を
 受けないようにし、逆に
 外部ショックを利用して
 そのプロセスを
 加速すべきだ」(余氏)

一方、中国金融40人論壇の
哈継銘・高級研究員は、
貿易戦争の火種となった
中国のハイテク産業育成策
「中国製造2025」が
「米国で過度の警戒を引き
 起こした」と分析。
その上で
「中国製造2025は実際には
 綱領的な文書で指導的
 スローガンの色彩が
 強かったが、非市場的な
 手段で米国と競争しよう
 としていると誤認された
 可能性が高い」との見方を
示した。

その上で
「トランプ政権が25%の
 追加関税を課す製品は、
 主として中国製造2025に
 関連した製品。しかし、
 中国の対米輸出で最も規模が
 大きいのは、携帯電話、
 家具、玩具、アパレルと
 いった低付加価値で
 労働集約型の製品なので、
 米国の対応による
 中国経済への影響は
 限定的だ」との見通しを
強調した。

ただ哈氏も米中貿易摩擦の
長期化を予想する。

「米中貿易摩擦は長期的な
 問題で原因は単純ではないが、
 米中両国には経済的な
 相互補完性が強く、協力の
 余地が大きいことを認識する
 必要がある。米中両国は
 世界の貿易体制の維持の
 責任と義務を果たし、
 WTOの枠組みを通して
 争いを解決すべきだ」(哈氏)

日本側からは1980年代の
日米貿易摩擦の経験を説明する
ものが目立った。

経済産業省出身の
津上俊哉氏は
「1980年代の日本経済は
 現在と完全に異なり、
 鉄鋼から家電・自動車・
 半導体といった製品で、
 欧米の同業者を追い詰めて
 いた。このため、欧米は
 一種の恐れ、ひいては
 大きな反感を持った」と
振り返る。その上で、
現在の中国の状況を
「中国製造2025が3年前に
 発表されたときには
 米国人は何も言わなかった
 のに、今になって
 騒ぎ始めたのは、
 この間に中国のニュー
 エコノミーが想像以上に
 進化したことに気づき、
 急に不安に駆られ始めた
 からだ」と分析した。

日銀出身の高橋亘・
大阪経済大教授は
「対米貿易摩擦の際の
 日本と足元の中国とを
 比較すると、
 最も大きく異なるのは
 中国がアジアのサプライ
 チェーンの一翼を担って
 いることだ。
 米中の貿易摩擦は
 中国のみならず
 アジア全体の問題でも
 ある」との見解を示した。

日中金融円卓会合に
出席したNRI北京の
神宮健・
金融イノベーション
研究部長は
「米中貿易摩擦について
 すぐ解決すると思って
 いる人はおらず、
 なかなか解決するのが
 難しいという反応だった」
と述べた。
(外信部 三塚聖平)
(産経ニュース8/16 08:00)

posted by (雑)学者 at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする